総合学習って何のために勉強するの?
教科の学習以外に義務付けられている大事な勉強なんだよ
受験につながる教科の方が重要な気がするんだけど…
総合学習は本当に重要だよ!
今日は総合学習について解説するね♬
あなたは『総合学習』と聞いてどんなイメージを持ちますか?
「小学校の調べ学習の延長」「受験勉強の息抜き」「将来のために必要な勉強らしい」…
こんなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?
実はこの『総合学習』…各学校が最も力を入れているといっても良いほど重要なものです!
そこで本時はこんなあなたに向けた内容です
- 総合学習は何のために勉強するのか分からない
- 各学校が総合学習を重視する理由を知りたい
- 総合学習でどんなことを勉強するのか気になる
さっそく本時の結論です
今の時代に求められる力を養うのが「総合的な探究の時間」であり,各校が重要視して取り組んでいる
本時の内容を見る前と後で,『総合学習』についての認識がガラッと変わることでしょう
それではさっそく内容に入りましょう!
【なぜ今総合学習?】高校で総合的な探究の時間を重要視する理由&学習事例『3選』
平成30年に改訂された高等学校学習指導要領によって,総合的な探究の時間が現在の形になりました
総合的な探究の時間を理解する❝カギ❞は学習指導要領にあります!
こちらの内容をひも解いていきましょう
学習指導要領に説明が詳しく載っているんだね
学習指導要領はとても重要なんだよ
総合学習の必要性が高まっている社会的背景
学習指導要領から一部抜粋します
今の子供たちやこれから誕生する子供たちが,成人して社会で活躍する頃には,我が国は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により,社会構造や雇用環境は大きく,また急速に変化しており,予測が困難な時代となっている。また,急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては,一人一人が持続可能な社会の担い手として,その多様性を原動力とし,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される。
(中略)
このような時代にあって,学校教育には,子供たちが様々な変化に積極的に向き合い,他者と協働して課題を解決していくことや,様々な情報を見極め,知識の概念的な理解を実現し,情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている。
高等学校学習指導要領解説 総合的な探究の時間編 第1章 総説(第1節 改訂の経緯より)
日本と世界の未来を見通して,学習指導要領が改訂されたことが分かりますね
要点をまとめると次の通りです
- 日本は少子高齢化で生産年齢が減少する
- 世界はグローバル化が進み予測困難な時代へ
- 社会の成長につながる新たな価値を生み出すことが期待される
- 他者と協働して課題を解決する力が必要となる
これらの内容は,何も総合的な探究の時間に限ったことではありません
すべての教科・科目の中で求められる内容です
特に総合的な探究の時間で求められる内容であると考えておけばよいでしょう
予測困難な時代かぁ…
機械に代替されない課題解決力を身に付けないとね♬
教科「総合的な探究の時間」とは?
総合的な探究の時間は次のように位置づけられています
総合的な学習の時間は,学校が地域や学校,児童生徒の実態等に応じて,教科・科目等の枠を超えた横断的・総合的な学習とすることと同時に,探究的な学習や協働的な学習とすることが重要である
(中略)
特に,探究的な学習を実現するため,「①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現」の探究のプロセスを明示し,学習活動を発展的に繰り返していくことを重視
高等学校学習指導要領解説 総合的な探究の時間編 第1章 総説(第2節 総合的な探究の時間改訂の趣旨及び要点より)
探究のプロセスとして,「①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現」が示されています
この探究のプロセスを踏まえた高度な学習を行うわけですね
「総合的な学習の時間」から「総合的な探究の時間」へ
平成30年告示の学習指導要領によって,高校では「総合的な学習の時間」から「総合的な探究の時間」に名称が変更されました
その違いは以下の2点です
- 探究が高度化し,自律的に行われること
- 他教科・科目における探究との違いを踏まえること
この2点について掘り下げていきましょう
①探究が高度化し,自律的に行われること
中学校までの総合的な学習の時間と,高校の総合的な探究の時間には,目標の違いがあります
図でイメージしましょう
小中学校までの総合的な学習の時間では,課題を解決した後に自己の生き方を考えていきます
高校の総合的な探究の時間では,自己の在り方生き方を考えながら課題を解決していきます
より自分自身に向き合う高度な学習と考えられますね
高校の総合学習の方が高度で発展的だね
②他教科・科目における探究との違いを踏まえること
学習指導要領から抜粋します
一つは,この時間の学習の対象や領域は,特定の教科・科目等に留まらず,横断的・総合的な点である。総合的な探究の時間は,実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在する事象を対象としている。
高等学校学習指導要領解説 総合的な探究の時間編 第2章 総合的な探究の時間の特質より
二つは,複数の教科・科目等における見方・考え方を総合的・統合的に働かせて探究するという点である。他の探究が,他教科・科目における理解をより深めることを目的に行われていることに対し,総合的な探究の時間では,実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在する問題を様々な角度から俯瞰して捉え,考えていく。
そして三つは,この時間における学習活動が,解決の道筋がすぐには明らかにならない課題や,唯一の正解が存在しない課題に対して,最適解や納得解を見いだすことを重視しているという点である
ここでは3点示されています
要点をまとめましょう
- 特定の教科・科目を超えて横断的・総合的である
- 複数の教科・科目における見方・考え方を活かし,様々な角度から俯瞰して捉えて問題解決につなげる
- 難解な問や唯一解がない問に対して,最適解や納得解を見い出す
「高校で学習する教科・科目の考え方を活かして,難しい問に対して様々な角度から捉えて解決策を出す」
これが他教科・科目における探究との違いであり,高校における総合的な探究の時間が目指すところです
総合学習とそれ以外の教科では違いがあるんだね
各学校で総合学習を重要視する理由【3選】
総合学習は学習指導要領で位置付けられた❝必ずやらなければならない学習❞です
教科書が用意されておらず,学習内容を一から作り上げて考えていく必要があります
そうであれば,県内すべての学校で同じ学習内容を取り扱えば効率が良いとは思いませんか?
しかし実際には,同じ学習内容を取り扱うのではなく,各学校で特色のある独自の学習を行って総合学習を重要視しています
一体それはなぜなのか…
その理由を3つ挙げてみます
- 学習指導要領で求める力を養うことができる
- 他校と差別化して学校の受験倍率アップにつながる
- 地域に愛される学校に近づくことができる
一つ一つ詳しくみていきましょう
理由①:学習指導要領で求める力を養うことができる
まず一つ目は,他者と協働して課題を解決する力を身に付けられる点です
総合学習で「①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現」のサイクルで学習を進めていくことで,今後の変化する社会に対応する力を養うことができるわけです
- 自ら進んでテーマ設定
- フィールドワークなどで情報収集
- 友人とグループワーク協議
- 大勢の人の前でプレゼン発表
例えば①~④のように学習を進めていくことで,他者と協働して課題を解決する力を身に付けられそうですよね?
学習指導要領で求められる生徒に身に付けさせたい力を養うことができるといえますね
理由②:他校と差別化して学校の受験倍率アップにつながる
二つ目は,学校の受験倍率アップを図ることができる点です
国語や数学,英語などの一般的な教科・科目では,他校と差別化できるような特色を出すことは難しいのが現状です
他校との差別化・魅力向上は,少子高齢化の波の中で学校が生き残るために必要不可欠といえます
そこで,総合学習で他校と差別化して他校との差別化・魅力化につなげるわけです
例えば,総合学習の取り組みで以下のことを行っていたらどうでしょう?
- 大学や地元企業との連携授業
- 地元食材を活用した商品開発
- インターンシップとして職業体験
他校と異なる取り組みを行っているその学校に魅力を感じませんか?
学校の生き残り戦略だね
理由③:地域に愛される学校に近づくことができる
三つ目は,地域に応援される学校に近づける点です
学校の教育活動を円滑に行うには地域の理解・協力が欠かせません
地域と連携を図る方法は以下の2つの方法があります
- 授業の時間内に連携する(各教科・科目で)
- 授業の時間外に連携する(学校行事など)
授業の時間内に連携する場合,授業の進度状況の制約があり,限られた教科・科目でしか実施しづらい現状があります
総合学習であれば学習内容を自由に組み立てていくことができるので,地域と連携を図りやすいわけです
総合的な探究の時間の学習事例【3選】
総合学習で実際にどのような学習を行っているのか…その事例を3つ紹介します
- 市の施策に提言する
- 地元企業と協力して商品販売
- 外部団体と連携して学習支援
一つ一つ見ていきましょう
事例①:市の施策に提言する
一つ目は,生徒が市役所の模擬職員となって市政の課題を考え,解決策を提案する学習内容です
学校の近隣の地域であることから,フィールドワークをして実際に地域を見て歩くことも多いです
市役所の行政担当者に加え,地域の有識者,大学教員,NPO,市民団体などとも連携を図ることも可能です
学習を進めるに当たり,市役所が協力的であることが必要不可欠になります
市役所が学校教育に協力的な学校で取り組むことが多いよ
事例②:地元企業と協力して商品販売
二つ目は,生徒が地元企業と相談して試作を重ねて商品を開発する学習内容です
完成したお菓子やパンなどの商品を実際に販売します
「商品開発→商品販売」までを,地元企業に協力してもらいながら学習を進めます
学校に協力的な地元企業の存在が必要不可欠です
ただ,どの学校にも協力的な地元企業は多く存在するので,地元企業との連携は実現しやすいといえます
事例③:外部団体と連携して学習支援
三つ目は,学習内容をコーディネートできる外部団体に依頼するパターンです
大手の教育関係の企業やスタートアップ企業,NPO法人など,現在多くの外部団体が総合学習の学習内容を提供しています
学習内容を一から組み立てるのは非常に困難です
外部団体のサポートを受けながら進めていく学校も多いですね
おまけ:その他の事例
最後に,その他の事例としていくつか挙げておきます
- 職場体験学習(インターンシップ)を探究する
- 学校支援コーディネーターと連携を図る
- 高大連携として大学から講師を招き講義を受ける
- 近隣の高校と研究成果発表
- 学校独自の学習内容を一から作成する など…
この他にも様々な学習内容があり,実際に学校現場で実施されています
総合的な探究の時間は,地域の実情に応じた❝学校独自の探究学習❞なので幅広い学習内容がありますね
【一覧】総合学習で学校と連携する外部団体
実際に総合学習で学校と連携を図っている外部団体について,まとめておきましょう
「どこの団体と連携できるか分からない」という学校関係者にも参考になるでしょう
- 市役所(役場)
- 県市町の教育委員会
- 大学教授および大学生ボランティア
- 小学校・中学校
- 社会教育機関(図書館,公民館など)
- 地元企業
- 大手の教育関係の企業(河合塾,ベネッセなど)
- 株式会社 教育と探求社
- スタートアップ企業
- NPO法人(認定NPO法人カタリバ など)
- 地域おこし協力隊 など…
こんなにたくさんの団体があるんだね!
地域の実情に応じて連携先を決めていくんだよ
学校現場は,地域の実情に応じてこれらの中から連携先を図っています
また,「学校に総合学習の波が来ている」…ということは各業者は百も承知です
このビジネスチャンスを逃すまいと,学校現場に様々な形でアプローチしています
金銭面とのバランスも考えて外部団体と連携を図りたいですね
【まとめ】今の時代に必要な学習…それが総合学習!
それでは本時のまとめです
- 少子高齢化やグローバル化の波により,他者と協働して課題を解決する力の必要性が高まっている
- 総合的な探究の時間では「①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現」の探究のプロセスが示されている
- 総合的な学習の時間(総学)から総合的な探究の時間(総探)に変わり,探究の高度化が求められている
- 各校で総合学習を重要視する理由は3つ。そのキーワードは①生徒の力 ②差別化 ③地域
- 学習事例3選は,①市の施策に提言 ②地元企業と連携して商品開発 ③外部団体と連携して学習支援
- 総合学習で連携できる外部団体は非常に多岐に渡り,地域の実情に応じて連携を図っている
いかがだったでしょうか?
変化する時代,人口減少が加速する日本…そんな新しい時代を担っていく若者をなんとかして教育の力で育てたい
総合的な探究の時間の重要性と必要性は加速度的に高まっています
学校現場でも,まだまだ総合学習の取り組みに対する理解度が足りない学校・地域が多い現状があります
学校現場,地域,保護者,そして生徒自身も,総合学習の重要性を理解して学習する時代が到来することを願ってやみません
本時の内容が少しでもそのお役に立てたら嬉しい限りです
今回は以上です。ありがとうございました